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「全国女将サミット2017新潟」開催 共感し、思い出を共有できる場に 旬刊旅行新聞7月11日号コラム

2017年7月12日(水) 発信

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(全国旅館おかみの集い 第28回 全国女将サミット2017新潟が行なわれた、ホテル日航新潟を信濃川から望む)

 

 島根県や九州北部など全国各地で豪雨による水害が発生している。被災された方々には心からお見舞い申し上げます。

 大きな被害を受けた地域の1つ、福岡県朝倉市では、原鶴温泉旅館協同組合に加盟する旅館・ホテルが、ライフラインが途絶えた地元被災者に温泉を無料開放している。その動きも迅速だった。地域に不測の事態が生じたときに、地元の旅館・ホテルが頼れる存在として認知されるのはうれしい。逆に、観光業界が厳しい状況になったときに真っ先に助けてくれるのは、地元のお客である。地域で助け合う姿勢には、胸を打たれる。

 7月5日には、新潟県新潟市で「第28回全国女将サミット2017新潟」(野澤邦子運営委員長)が開催された(次号詳細)。新潟県内でも大雨が降り、当日参加できない女将がたくさんいるのではないか、信濃川のウォーターシャトル乗船観光が川の水位上昇で欠航になるのではないか。また、翌日の佐渡島へのエクスカーションも予定通り行えるかという不安もあったが、当日には雨が上がり、無事にすべてのプログラムが実施された。

 女将サミットでは、基調講演が行われたあと、いくつかのテーマに沿った分科会を開くのが常であったが、今回は参加女将が全員、会場のホテル日航新潟を出て、目の前に広がる信濃川クルーズを楽しむという趣向だった。目的地の新潟ふるさと村でにいがた総おどりを観たり、地元の新鮮な食や自慢のお酒など、女将たちはたくさんのお土産を買ったりして、新潟でのひとときを満喫していた。

 大雨の影響は残り、日本を代表する信濃川の河口付近でも、水嵩がいつも以上に増し、濁流で大きな木の枝なども土色の水面に浮かんでいた。

 それでも厚い鉛色の雲が少しずつ薄くなり、夕方近くには夏らしい青空が広がった。女将たちもデッキに出て、身を乗り出して川風を浴びたり、遊びに来たカモメの写真を撮ったり、日々の多忙な業務を離れ、自然豊かな新潟での1日を楽しんでいたのが印象的だった。

 そのような船上のリラックスした女将たちの姿を見ながら、大勢での旅もすごく楽しいのだと、改めて感じた。

 日本でも団体旅行が全盛の時代から、旅のスタイルがどんどん個人化に向かっている。気の合った数人のグループや、家族といった小単位の旅行、さらには夫婦やカップル、そして1人旅も増えている。

 旅の目的が細分化していくなかで、他人との団体行動よりも、自分の好きなように動ける「自由な旅をしたい」という欲求が強くなるのは当然かもしれない。しかし、旅の大きな醍醐味の1つに、感動と思い出の共有がある。1人旅は楽しいが、どうしても独り言が多くなる。「何だよ、これ」と愚痴を言うのも1人。「すごくキレイな景色だな……誰かに見せたいな」と小さく呟くのも1人。尾崎放哉ではないが、「咳をしても一人」といった気分になる。

 全国の女将が集まり、同じ船に乗って短い旅をするというのも、きっといい思い出になるはずだ。地域や、宿の規模は違っても、日々同じ境遇で自分自身と戦っている者同士。お互いを労わり合い、励まし合う姿が今回も見られた。全国の女将が共感し、思い出を共有できる場が今後も続けられるといいなと思った。

(編集長・増田 剛)